室戸岬
「イシマルさん、以前ご一緒しましたよネ」
ある女優が、久々だと声をかけてくれる。
10年か15年ほど前に、ご一緒したらしい。
『いつだっけ、何の時だっけ?』
「え~と、確か・・2時間ドラマで、地方に行って・・」
『2時間ドラマは、おおむねそうだネ』
「温泉旅館が宿舎でしたヨ」
『それ、普通だナ』
「え~とぉ、夕ご飯を広間で一緒に食べてぇ~」
『ま、たいがいそうだネ』
「あの時は、隣の席で食べさせて頂いて・・」
『あっそ』
「面白いお話をいっぱい聞けて・・」
『ふ~ん、どこに行った時かなあ?』
「金沢?伊勢志摩?伊豆?能登半島?・・」
『君は、お酒呑めなかったでしょ』
「え~覚えてるんですかぁ~?」
『うん、君の前に置いてあったビールを飲んだから』
「私の分まで」
『グビグビ』
「それは覚えていて、どこで何のドラマかは?」
『忘れた』
「そうそう、岩登りを始めたとか仰ってましたヨ」
『ふ~ん、だとすると、15年前位かな』
「鯉料理の味付けを褒めてましたヨ」
『って事は、海辺じゃなく、山間部だナ』
「どこに行って、何の作品か思い出しました?」
『いや全然』
「そうだ!イシマルさん、犯人でしたヨ!」
『それ、なんの参考にもならないナァ』