私の生まれは、大分県の別府である。
産湯が温泉だった。
町中に温泉が、コンコンと湧く珍しい観光地だ。
その別府には、6才、14才、17才の時に住んでいる。
朝風呂を浴びて、学校に出かけ、帰ってくるなり温泉に浸かる。
風呂が好きだった訳ではないが、
習慣として、温泉に入っていた。
家にガスや薪炊きの風呂を造るより、
温泉を引いた方が安くあがる町である。
余った温泉が、家の横の下水路をドウドウと流れている町だ。
流れた先の別府湾は、海岸の海水温度があがり、
様々な動植物の棲家となる。
当時、家のまわりには、町や村が運営する共同浴場があった。
もちろん温泉。
大人10円、子供5円。
入口ドアを入ると、下に向かって階段があり、
その先に、脱衣場と風呂場があった。
この、「道より下がってゆく」風呂が、
当たり前だった。
なぜ、下がるのか?
ポンプでお湯を汲み上げるエネルギー源がないので、
重力に任せた結果、地下に向かったというのが理由だ。
どこの風呂も、地下に下がった。
子供的には、不気味な雰囲気が漂っていた。
ディズニー映画で、森の魔女が、ブクブクと蒸気のでる、
怪しい薬を造っている場面を思い出させる。
あの共同浴場は、今、どうなっているのだろう?
先日、別府を散策する機会があり、
あちこちの温泉を巡ってみた。
あった、あった、まだあった!
私が浸かった浴場もまだ残っていた。
「残って」という言い方は失礼かもしれない。
現役で、営業しているのである。
200~300円で地元の憩いの場になっている。
無料開放している浴場もある。
旅行者でも気軽に入浴できる。
ただし、タオルは持参して行かねばならない。
石鹸のたぐいもない。
番台にも、人が居たり居なかったりする。
シャワーなんて洒落たモノもない場合が多い。
歩きで、5軒くらい回れたりする。
回れはするが、5か所連続で温泉に浸かるのは、
ちょいと危ない。
湯あたりする。
せいぜい3か所に留めたほうが無難だ。
「オレは、別府育ちだから」
言い放ち、5か所梯子をしたお馬鹿がいたが、
見事、湯あたりした。
私のことか!
幼少のけんじろう君が通っていた風呂は改装中