
山に登るには、天気予想の知識が必要である。
現在は、ネットでもテレビのdチャンネルでも、
詳しい予想天気図が見られる。
よほどの事がない限り、荒天の中、
3000m級の山岳に迷い込む事はない。
ところが・・
40年以上前、天気予想には、ラジオの短波放送だけが頼りだった。
定時になると、ラジオから、低音の怖~い声が流れてくる。
「北北東の風、風力3、1014ミリバール」
日本中にある様々な箇所の、現在の風と気圧を読み上げている。
テレビで聞く、ヘクトパスカルと云う気圧表示は、以前、
ミリバールと呼ばれていた。
このラジオからの声を、暗い山の中で、
テント内、一人で聞くのである。
聞きながら、専用の日本地図のすべての箇所に書き込んでいく。
その気圧配置を線でつないでゆくと、天気図が出来上がる。
ラジオを聴くだけで、明日の気象予報が出来る。
うまいシステムだ。
問題は、ミリバールである。
真っ暗な山中・・
ラジオから、
低~い声が聞こえてくる。
「・・・ミリバール」
アナタ!
このミリバールを、低い声でつぶやいていただきたい。
次に、ヘクトパスカルと声に出してみよう。
どちらが不気味かは、明白だ。
「ヘクトパスカル」と、子供に聞かせれば、笑いだす。
逆に、
スリラー映画のタイトルに、コレがあっても私は驚かない。
《ミリバール》
ところで、なぜ、ミリバールからヘクトパスカルに変更したのだろう?
まさか、「山の中で聞くと不気味だ」という意見が通ったのだろうか?
私のような怯え人が大勢いたのだろうか?
変更の理由は・・
一晩に、何十回もミリバールと聞かされ続けた大勢の怯え人が、
ついに反旗をひるがえした!
うん、たぶんこれだナ。