「28年暮らしていて、初めてですワァ」
《ロッジすみや》のご主人が、嘆いている。
雪がいまだ降ってこないと言うのである。
北八が岳のふもと、蓼科高原と云えば、
標高1000mを遥かに超え、
通年であれば、12月から雪は降りはじめ、
1月の中旬ともなれば、一面銀世界が広がっているハズだ。
ところが・・・
雪が全く降らない。
雨が一滴も落ちてこないという砂漠の話がある。
雪の場合、一滴ではなく、何と言うのだろう?
ひと粒も空から、落ちてこないと云うのだろうか。
一応、氷点下のメモリを温度計は指している。
しかし、空気は、カンと金属音を発して乾いている。
例年であれば、すみやの屋根には、1mもの雪が積もり、
その重みで、家屋がきしみ、
部屋のドアがまともに開かなくなっていた。
ところが、今年は、
ガラガラガラガラ~
軽い力で、引き戸が、すっとんでゆく。
パシンッ!
よし、霧ヶ峰をスノーシューしてみよう。
和カンジキを担いで、霧ヶ峰に向かう。
「なんだコレは?」
秋にこの地に来た時のままじゃないか!
車のスタッドレスタイヤも、性能を発揮する間がない。
アイゼンすらいらない遊歩道が続いている。
スノーシューのスノーが無いのだから、シュー。
靴を履いた、ただの散歩である。
散歩とはいえ、グルリ一周、14キロほど歩いてきた。
本来、雪を蹴散らし、巻き上げ、雪にまみれ、
時に、深雪にはまり、モモの深さをラッセルしたり、
「♪~雪のや~まは、と~もだちぃ~♪」
銀世界に酔いしれるハズだったのだが、
ココは、まだ秋が居座っている。
よし、仕方ない、明日はスキーをやろう!
人工雪とやらを滑ってやろうじゃないか!