おお、なんと云うことだ!
私は、スキー場のひとコースを貸し切っている。
いや、
借り切っているではないか!
雪が降らないと嘆いている、長野県のさるスキー場で、
平日に滑っていた。
殆ど人とすれ違わないほど、すいていた。
その昼どき・・・
ついに、頂上までいくリフトに、
誰も乗っていない時間帯が生じた。
つまり、このコース、900mを私しか利用していない。
私が滑り降り、リフトに乗り、頂上に行き、
又滑り降りる。
私の為にだけ動いていると言っていいリフトであり、
ゲレンデコースである。
もし、私が、違うコースに浮気しようものなら、
このリフトの
存在意義はどうなる?
リフトの出発点と、終点で、
親切にアシストしてくれているオジサンの、
働き甲斐はどうなるのか?
それを想うと、とても、このコースから離れられない。
昼時だからと、レストランに行く訳にはいかない。
ここはひとつ、リスの気分になって、
グルグルグルグル回っていなければならない。
「貸し切りだぁ~」などと浮かれている場合じゃない。
むしろ私には使命を与えられている。
このリフトに乗り続けるという使命だ。
監視されている感すらある。
普段、リフトを降りる時、
オジサンは声を掛けてくれる。
『ありがとうございます』
この言葉が、今は、こうも聞こえる。
『逃げるなヨ』