
せっかちは、
電源のスイッチが入れると、すぐに反応するモノが好きだ。
その中でも、熱を発する器械を褒める傾向がある。
例えば、ホテルに常備してある《電熱湯沸し器》
お湯を入れた金属の容器を、プレートの上に置くだけで、
すぐさま反応し、グツグツ音を発しだす。
見事な反射神経を持っている。
例えば、車の後部のガラスに入っている電熱線。
冬場にガラスが曇ると、手元のスイッチをいれる。
バックミラーで確かめる。
すると、確かめる間もなく、みるみるうちに、
曇りが取れてゆく。
反応の速さが秀逸だ。
スイッチを入れて、5秒後には、細く乾いた線ができる。
冷たく冷え切ったガラスが、かくも素早く温まるものだろうか?
驚き、おそれいる。
例えば、床に敷いたカーペットのスイッチを入れても、
(暖かいな)
実感するのは、5分以上経ってからだ。
と、感心していながら車を運転していた昨日の事だ。
アレッ?
スイッチを入れたのに、後部ガラスが曇ったままだ。
壊れたのかな?断線したのかな?
すぐに、自動車ディーラーへ向かう。
「断線かも・・みて貰えますか?」
『お待ちください』
コーヒーを飲みながら、お待ちしていた。
20分ほどして、係りの方が、申し訳なさそうに、
『ガラスの内側を綺麗に拭きましたので、たぶん』
えっ・・たぶんって?
そうだったのか。
ガラスの曇りが取れないのではなく、
ガラスそのものが汚れていたのだ。
最近の車の後部ガラスは、拭きにくい。
傾斜があり、手を伸ばして拭くのが難しい。
棒に布を巻き付けて拭いたりする。
『もし又、拭きにくい時は、こちらにお越しください』
「はい・・・」
小さい返事をして、すごすごと帰った。
単に掃除をさぼったお馬鹿な人になってしまった。
恥ずかしい限りである。
シュン・・・

謙二郎ならぬ、謙丸