「滝田君、ポールに入ろう」
先週、スキー場で大畠先生に言われたセリフを、
やはりスキー場で、滝田君に丸投げしている。
「大回転って、やった事ある?」
『ないヨ』
「オレ、先週やったゼ」
『ゲッ』
私のスキーの師匠を差し置いて、ポールの先輩になってしまった。
「やろうぅよう~やろうぅよぅ~」
まとわりつく私にあきれ、仕方なく、申込書にサインする滝田君。
ゼッケンをかぶり、ポール現場に向かう。
25人が集まった。
隣の滝田君が急に黙った。
なんたって、人生初体験!
緊張しているようだ。
ゴーグルの中の目が、カミソリのように細くなっている。
「はい、どうぞ!」
まず、一番手、イシマルが飛び出す。
気温が高く、雪質が悪い。
フィニッシュでコーチのワンポイントアドバイスを受ける。
「暑いのは分かるが、まず、服のチャックを締めましょう」
『はい』
次は、滝田君だ。
さすが、長年、スキーをやってきただけあり、
初めてなのに、スイスイポールを抜けてゆく。
25人が何度も同じラインを滑ると、雪はすぐに、掘れてしまう。
溝ができる。
溝なんてものではなく、小さなハーフパイプだ。
ドデ~ン
2回も転倒してしまった。
バシュー
1回、コースアウト。
で、師匠はどうだろうか?
見ていると、1回コースアウトしたではないか!
ドデ~ン
スッ転んでいるではないか!
ま、ポール初心者だから、しょうがないネ。
次から、頑張んな!