築地魚河岸で扱っている魚を、紹介しよう。
先日場内の仲卸をブラついて、写真を撮らせてもらった。
場内を歩くのに、特別入館証なるものはない。
誰でも入れる。
しかし、暗黙のルールがある。
《邪魔をしない》
なんたって、生モノを扱っている現場だ。
とにかく急いでいる人達が、狭い場所を早歩きしている。
ターレーという軽トラックが疾走している。
その流れにノッテいない人はすぐに分かる。
邪魔だ。
まず、長靴を履いていくべきだ。
魚は触らない。
写真を撮るなら、許可を得よう。
誰でも、仲卸で、一匹の魚を買う事はできる。
しかし、ああだこうだと時間をかけるのはダメ。
比較的すいている時間帯に、
「この鯛一匹もらえますか?」
『あい、4800円』
このくらいの簡単な会話で切り上げたい。
買ったあとは、自ら持ってきた買い物かごに入れて帰る。
スーパーのように、パックしたり、包んだりはしてくれない。
街場の飲み屋のおやっさんは、こうやって魚を仕入れている。
数匹の良い魚をかごに入れ、築地の駐車場に向かうのである。
飲み屋の壁のお品書きに、墨の字で、
《長崎産 ブリの刺身 1300円》
《三崎漁港 ワラサ刺身 1200円》
《石巻漁港 ヒラメ刺身 1500円》
などと見つけたら、
「はは~ん、おやっさんが魚河岸で仕入れたナ」と思えばいい。
おやっさんが、たくさん仕入れる人であり、自分の力で運べない場合、
私たち仲買の従業員が登場する。
小車と呼ばれる運び道具で、駐車場まで運んでゆくのである。
おやっさんとて、毎日築地に足を運ぶワケではない。
週に2回だったり、3回だったり。
ゆえに、その飲み屋のおやっさんの仕入れ日を知れば、
同じ値段で、新鮮な刺身が食べられる算段だ。
「ねえ、おやっさん、何曜日に築地行ってるんですか?」
魚を紹介しようと言っておきながら、紙面が尽きた。
マグロの中骨