《アカムツ》
関東辺りでは、幻の魚などと呼ばれ、
マニアックな釣り人のターゲットになっている。
金沢を旅した人なら、
《ノドグロ》と呼ばれていたのを覚えているだろう。
魚体は、鯛のように赤く、さほどの太さはない。
大きさも、40cmがいいとこで、
喉の奥、つまり腹の中が黒い。
ノドグロと名前を付けた人の観察眼は、正直だ。
よく似た名前の《クロムツ》。
この魚も旨いのは変わりないのだが、
黒さの印象と、まあまあ、釣れるので、
希少価値が薄れている。
とはいえ、アカムツの旨さは突出している。
金沢の街の寿司屋のカウンターに座り、
「アカムツ」
何気なく板さんにつぶやいたつもりだったのだが、
葉っぱの上に出されたアカムツの握りを頬張った途端!
・・・声が出なくなり、うずくまっている。
その代償として、
帰りに、財布を閉じる手が震えるのは、いたしかたない。
アカムツを焼いて食べれば、いちいち感動し、
煮つけて食べれば、いちいち溜息を漏らす。
魚の王様選手権に、参加させたくない輩である。
だって、金メダルを取るのは、目に見えているのだから・・・
ノドグロは金沢の近江町市場で見つけられる