《クエ》
やはり、クエの話をしなければ・・
クエとは、和歌山だの高知だのでの、高級魚の代表選手である。
私の旅は、こうやって始まる。
「そうだ・・クエを食べにいこう!」
思いたったら、羽田空港に走る。
ピュ~ンと飛んで、高知は、竜馬空港に降り立つ。
バスと列車を乗り継ぎ、中村の街に向かう。
なんたって、クエが食べられる確率が高い街だ。
夕方、中村駅のレンタルサイクリングの店にいる。
チャリ~ン。
走り出し、街中の魚屋さんを探す。
見つけるや、
「あの~今日、クエが食べられる料理屋さんありませんかねぇ?」
すると、なんたって魚屋さん、
クエの流通には敏感だ。
アチコチに電話をかけてくれる。
『○○屋さん、今日、クエ入っちょろうかネ?』
『○○さん、おたく昨日、クエ取りよったやネ』
しかして、お店を紹介して頂ける。
いったん、自転車を駅に返し、
教えられた店に向かう。
さあ、クエ三昧だ。
前菜だの、八寸だのを腹に入れたくない私のワガママな胃袋に、
クエだけを放り込んでゆく。
舌鼓はアレグレットで打ち続けている。
「女将さ~ん、今夜のネ、どこか民宿教えて貰えませんか?」
『食事は?』
「いりません、素泊まりで」
てなこって、料理屋の女将に教えて貰った民宿に向かう。
安い。
その上、紹介なので、良き部屋をあてがって貰った。
クエだけを食べたい。
クエ三昧したいという願望をなしとげ、
格安の旅行をしているのである。
デメリットがあるとすれば、
クエを食べている最中でも、まだ、泊る宿が決まっていないという、
不安定さだ。
その不安など軽く吹き飛ばすだけの魅力が、クエにはある。