ヴォルテッラには、古代劇場があった。
街の南側の城壁の外に、コロシアムが、
まるで、遺跡のように残されていたのである。
ようにと云ったが、遺跡である。
半円状に広がる客席を抱え、小さな半円形の、
コンパス定規の様なステージが見える。
その後ろには、崩れているものの、
石造りの背景がそそり立っている。
現代の劇場でいえば、ホリゾントだ。
お客から見たときの、背景にあたる場所だ。
こんな構造物を、重機がない時代に、
丘の上に石を運び造ったらしい。
そのヴォルテッラの街をそぞら歩いていたら、
劇場を見つけた。
現代にも使われている古い劇場である。
今も現役で使われています・・と次なる演目が貼りだしてあった。
規模からすれば、相当立派な劇場である。
人口5000人の街としては、異例のしっかりした芝居小屋だ。
・・っとここで、劇場で観劇でもできれば良かったのだが、
劇場前で、感激にふけるしかなかった。
古い劇場のメリットとは何だろうか?
古代コロッセアムと、古い劇場。
その二つに共通する良さとは・・・?
《音が、伝わる》
その昔には、電気を使った音響機械がなかった。
役者や演者は、肉声で勝負するしかなかったのである。
すると、どうなる?
声の大きい人だけが生き延びる。
生き延びた人たちも、考える。
「どうやって、遠くまで声を届かせる?」
その答えが、このヴォルテッラの街の劇場にある。
古代のコロッセオでは、半円形の観客席の包み方だ。
音を反響させる構造になっている。
さらに、後ろに反響板とも言える石壁を配置する。
で、劇場の方は、伝統的な4階建ての客席方式だ。
いかにステージまでの距離を近くするか?
っと、こう述べたが、実は、目で見ていない。
劇場前で、写真を見ながら、想像にふけっているだけだ。
似ている劇場を思い出せば、
ニューヨークのブロードウエイの古い劇場であり、
日本の京都の《南座》であり、
新橋の《演舞場》である。