テレビだの劇場だので、ドライアイスがたかれる。
モクモクと煙のような白い霧が床を覆い尽くす。
幻想的で、照明を当てると、いかようにも舞台を表現できる。
そのドライアイスの中で、踊ったりする人たちがいる。
踊るのならまだいいが、
演出上、鉄砲で打たれて倒れる人がいたりする。
バギュ~~ン!
バタリ・・・
さて、その人たちはどうなるのでしょう?
ドライアイスの煙幕の中に倒れた。
正確に言えば、標高50センチの煙幕の下に倒れた。
ドライアイスとは、
二酸化炭素である。
シュ~~~
噴きだされると、その重さで、
二酸化炭素は、もっとも底辺にただよう。
つまり、そこは、
酸素濃度が極端に薄い。
バギューン!
その昔、イシマルが撃たれて、舞台に倒れた。
そこは、ドライアイスがフンダンに敷き詰められた舞台だった。
ドタンと倒れると、客席から見えなくなる。
それをいいことに、気を抜く。
ところが・・・
ハアハアハアハア~
息をしたいのだが、肺に空気が入ってこない。
その理由は、さっき述べた。
二酸化炭素が充満する床に寝そべっているからだ。
本番中なのだが、パニックに陥る。
「息ができない!」
秒単位ならば、我慢できるのだが、演出上、分が経過しなければ、
立ち上がれない!
「死ぬ!」
しかし、ここで、立ち上げれば、台無しである。
死んだハズの戦士が、「うぷっ」とか言って生き返るのは、いかが?
では、どうする?
「死ぬ!」
私は、ふところに隠したビニール袋を取り出す。
あらかじめ溜めていた空気だ。
ドライアイスの煙が乱れないように、
そ~と、袋の包み口から、ささやかな空気を吸うのであった・・
他の人たちはどうしていたかって?
・・・我慢してたんじゃないかなぁ~死んだ奴いなかったから。