シラス大好き人間がいる。
静岡の焼津あたりで、シラス丼と看板があれば、
さっき昼飯食ったばかりなのに、ノレンをくぐろうとする。
シラスという文字に無条件に反射している。
私が、サバという文字に反射するのに似ている。
そのシラス好きは、当然、スーパーでも目がゆきとどく。
海産物売り場にある、シラスの湯であげたパック詰め380円。
こいつが気になる。
昨日も、パック詰め287円が気になったばかりだ。
ひょっとしたら、287円は買ったかもしれない。
いや、買わなかったかもしれない。
(う~ん、どっちだろう?)
ええいままよ!
380円を買い求める。
やったぁ~喜々として、家に戻り、冷蔵庫をあける。
すると、やはりというか、やっぱりと云うか、
287円のパックが鎮座している。
っと、ここでめげないのが、シラス好きだ。
「食っちまえば、いいんだろ!」
あくまで楽観主義だ。
小魚の大量殺りくなどというギャグ的な非難など聞く耳も持たず、
あっという間に、冷蔵庫の中身をさらうのである。
そういえば、私はこの春、シラス漁の船に乗せてもらった。
富士山の見える駿河湾を静かにすくう漁だった。
何十槽もの船が、沿岸を走り回り、
小指にも満たない小魚を集めまわる。
マイワシの稚魚だったり、
カタクチイワシの稚魚だったり、
ウルメイワシの稚魚だったり、
それ達の総称をシラスと呼び、
トンの単位で水揚げされる。
単に大根おろしをかけて食ったり
サラダにまぶしたり、
汁にぶっこんだり、
アツアツのご飯に乗っけたり、
シラス大好き人間にとってみれば、
その三日月型をした白い物体は、
高貴な万能オカズなのである。
因みに言っておきますが、シラス好きは私の話ではありません。
そんな人を目の当たりにしているだけです。
億匹のシラス
漁港のシラス丼 700円