
「そうだ、北海道へ行こう」
雨が続き、風も吹かない。
アルプス系の山も連日、雨に覆われている。
それならばと云うんで、ここはひとつ北海道の山に登りにいこう!
ブ~~ン
降り立ったのは、旭川空港。
レンタカーを借りるや、北海道の最高峰、
《旭岳》2291m、に向かう。
天候晴れ、爽やかな風の中、快適なドライブだ。
信号のほとんど無いまっすぐばかりの道道(どうどう)を、
登山口へ。
ところが、ロープウエイの駅まで来たところで、雲行きが怪しくなる。
ガスが出てきた。
いざ、歩きはじめる。
視界は、10m先を歩く人間がぼやけている。
20m先はもう見えない。
登山道は、踏み跡がしっかりしており、尾根登りなので、
迷う心配はないのだが、なんぜ、初めての北海道の登山だと言うのに、
霧の中を徘徊しているだけである。
ここが、本州の山であっても、九州の山であっても不思議でない。
時折すれ違う登山者が、亡霊のように、霧の中に浮かびあがる。
2時間ほど登ると、突然、平坦になった。
頂上の標識が立っている。
「なあ~~んも見えん」
本来なら、360度の眺めに、ドラが鳴り響く場面だ。
オーケストラが全楽器をフル音量で、奏でるシーンだ。
ティンパニとシンバルが、
出番だとばかり腕を振り回す豪快なフィナーレとなる筈だ。
はじっこが断崖になっているらしいが、
な~~んも見えん。
その後、てくてくと降りている時だった。
ふいに霧が、サ~ッと吹き払われたのである。
振りかえると、頂上近くの稜線がくっきり!
まさに曇天の霹靂!
たったの5分間のパノラマショーであったが、
充分心に残る映像が刻まれた。
アレがなかったら・・・
非常に残念な、初北海道登山となっただろう。
たぶん、な~んも書かなかったかもしれん。


一瞬のガス吹き飛び