
「ヘイシャの扱っている製品に関しては・・・」
ヘイシャが、おおはやりである。
ヘイシャ・・漢字では、弊社。
いつから、自分の勤めている会社を、
弊社と呼ぶようになったのだろう?
「わが社に、お越しいただけたら」
わが社の時代があった。
森繁久彌演ずる社長物語では、わがしゃと呼んでいた。
「オンシャ(御社)の方針ではですネ」
御社の時代も長かった。
そんな時代でも、自分の会社を表現するのに、
それなりの苦労をしていた。
「ええ・・ウチの会社はですネ」
「はいはい、当社では、裁判などとは」
「ごめんなさいネ、つたない貴社でございますが」
ところが、
ある日、横並びで、皆が、弊社を連呼しだした。
名刺を差し出しながら、「ヘイシャから・・・」
言葉がつむぎだされてくる。
50、60のおじさんが、「ヘイシャ」を喋っているならまだいい、
20歳を超えたばかりの新入社員までもが、
「ヘイシャ、弊社」と連呼する。
数年前、初めて、このヘイシャなる言葉を聞いた時、
沖縄の「♪~ハイサおじさん~♪」を連想してしまった。
♪~ヘイシャおじさん~♪
それどころか、漢字が思い浮かべられなかったので、
無理やり漢字を当てはめたものだった。
<閉社>
お宅の会社はいつも閉まっているのですか?
<塀社>
お宅の会社は塀が高いのですか?
<兵舎>
お宅は、鉄砲関係でしょうか?
<ヘイシャ>
カチューシャ?
やがて、弊社の漢字は知ったものの、お会いする方々の、
ヘイシャヘイシャの合唱に、たまには、
弊社を使わずに喋ってくれる方がいないものかと、
期待したものだった。
そして、ふと気づいたのだ。
そうか・・私も一応会社を持っている。
個人事業ではあるが、石丸事務所という会社じゃないか!
よ~し、明日から、わが社をヘイシャと呼ぶことにしよう。
「あ~そのドラマはネ、弊社を通してくださいませ」
「インタビューはヘイシャで受けさせてもらいます」
「ヘーシャではOKですが、イシマルが首を振りますかねぇ~」
「ヘーシャのイシマルは今、穂高に登ってますが」
「ヘーシャはですね・・・ヘーヘックション!」

ヘイシャはラーメン居酒屋でございます