
なんと云うことだ・・
初めて、出演することになったのだ。
《オペレッタ》
オペレッタとは、オペラの芝居バージョンだと思えばいい。
喜劇オペラとでも言おうか。
題名は、《こうもり》
古典である。
「歌うんですか?」
いい質問だ。
『歌うかもしんない』
ウソです。
今、稽古をしている。
この稽古が、実は、とんでもなく恐ろしいモノなのだ。
何が、恐ろしいかって・・・
アナタは、列車が走ってくるガード下に、
立ち続けた事がありますか?
アナタは、お寺の鐘の中に立ち、
ゴ~ンと鳴らされ続けたことがありますか?
音の脅威です。
声の脅威です。
世の中にこんなに
声の大きな人がいるとは知らなかった。
役者として、舞台にさんざん立ってきた私なのだが、
もの凄く大きな声の人を知っているハズの私なのだが、
声の大きさとしては、レベルが違った。
とんでもなかった。
オペレッタでは、基本的に歌を唄うのであるが、
大きな劇場で、マイクも使わずに声を響かせる人達の集団だ。
そんな人が、狭い稽古場に集まり、
本番さながらの音量で、歌う。
そこに、私は・・いや、私の
むき出しの耳が存在している。
生まれて初めて、
声の音量が怖いと思った。
次の稽古から、私は、ヘッドフォンを持参した。
ヘッドフォンを持参するのは、今年2回目だ。
一回目は、アイマックシアターの轟音を避ける為だった。
つまり、マイクもスピーカーも使わないオペラの方達は、
アイマックスシアターのどでかいスピーカーと同等か、
それ以上の肉声を持っているという証明である。
稽古が終わり、食事に行った私は、
レストランで不自然な大声で会話をしていたらしい。
なんと、耳が、瞬間難聴になったのだ。
今、私はテレビを見ているのだが、
異様な音量で聞いているらしい。
どうやら私は、稀有な経験をしたようだ。