
「喉で歌っているんじゃないんです」
オペラの出演者が、ボソリとつぶやく。
今、つぶやくと言ったが、そのつぶやき自体の音量が大きい。
「頭蓋骨を振動させるんです」
言いながら、実演してくれた。
実演とは、大きな声を響かせたと云う意味だ。
私の耳との距離は、1mほど。
やばい!
思わず、後ずさりする。
5m離れた。
空気が振動しているのがわかる。
音叉を置いておけば、共鳴するハズだ。
気象庁の台風情報では、
『半径○キロ以内では、20mの暴風が』
『半径○キロ以内では、35mの・・』
などと表現する。
コレをオペラ歌手に当てはめよう。
『半径5m以内では、消防車のサイレンレベル』
『半径2m以内では、ジェット機の轟音をまじかで』
『半径50センチでは、削岩機の真横に・・』
ただし、デシベル表示の大きさであり、
音色自体は美しい。
なんたって、歌を歌っているのだから・・・
ゆえに、離れて聞いている分には、快適である。
では、どのくらい離れていればいいのか?
その目安を示す値を作るべきであろう。
《アナタの声は、10m》
《アナタの声は、20m》
《アナタの声は、100m》
距離で基準値を決めるとすると、
オペラ歌手は、履歴書に書かねばならなくなる。
<バリトン48m>
<ソプラノ75m>

洞窟内では絶対歌わないでください