
山に登ったイシマル探検隊の隊員たちは、
東京に帰る途中、諏訪湖SAにある温泉につかっていた。
諏訪湖を眺めながら温泉に入れる嬉しいサービススポットだ。
600円。
ただし、露天風呂はない。
サウナもない。
お湯は、かなり熱い。
サウナがないという事は、冷泉もない。
熱がりは、シャワーで冷水をかぶるしかない。
温泉に入る筈だったが、冷たいシャワーばかり浴びている。
隣につかっている滝田くんが、ふとつぶやく。
「みんなカゴを持ってるネ」
常日頃、スパだの温泉だの銭湯だのに入りつけている人は、
例えば、私は、取っ手のついたカゴにシャンプーをはじめ、
洗面道具がどっさりと収められている。
このカゴは必需品だ。
真っ裸ではあるが、カゴとタオルを引っ提げて、
湯船に向かっているのである。
特に、この諏訪湖サービスエリアの温泉に、
昼間訪ねてくる男たちは、
温泉のプロである。
風呂の達人である。
街道を行き来するトラッカー達の常風呂と言ってよい。
カゴを持参しているのは、常識だ。
いわば、西部のガンマンが、腰にピストルを下げているのに似て、
腰のカゴは、温泉達人のピストルにほかならない。
滝田
「みんなカゴ持ってるネ」
イシマル
『俺も持ってるゼ、持ってきてないのは、君だけだゼ』
滝田
「ガ~~ン」
イシマル
『ふふふ、君は、素っ裸のど素人だゼ、バギューーン!』