《カラスウリ》
今では、華道などで、花の飾りつけなどにも使われている。
秋、周りの木々が葉をおとす頃に、
熟柿のような色合いの実をつける。
子供のころ、山の中でこの実を見つけると、
あまりの美味しそうな姿に、思わずもいでみたものだ。
手に取って眺めているうちに、微妙な匂いに気づく。
試しに割ってみた。
割ろうとして、爪をたてるやいなや、
イヤ~な臭いがふきだす。
「え~何?この臭いぃ~?」
腐臭に近い。
もし、サバイバルで食べ物が全くなかったとしても、
たぶん口に入れられない。
毒はないと思うのだが、我慢しても食べられない。
カラスウリと名付けられているが、カラスは食べるのだろうか?
これまで観察した限りでは、カラスがついばんだ痕跡はなかった。
カラスウリはこの柿色のまま、やがてひなびて枯れていた。
なんでも食べるカラスにさえ、そっぽを向かれる可哀想なウリ。
ならば何の為に、あれほど美味しそうな色合いに染めるのだろう?
種を遠くに運んでもらおうという気はないのだろうか?
このカラスウリにも花が咲く時があるらしい。
夏の終わりに一瞬だけ咲くのだという。
毎年、いつ咲くのかと眺めているのだが、
咲いたところを見たことはない。
蓼食う虫も好き好きというのだから、
好んで食べる鳥がいてもよさそうなものだが、
枯れ野を際立たせる役目しか果たしていないよう気がする。