《ケジャン》
韓国の見事な料理である。
見た目はとんでもなく辛く、
食べてもやっぱり辛く、
しかし、次第に甘味が噴き出してくるワタリガニ料理だ。
30年前、まったく辛いモノが食べられなかった私。
七味唐辛子も、ワサビも、口にしなかった。
おでんですらカラシに触らなかった。
そんなある日、新大久保駅近くの韓国料理屋にいた。
最初に出された料理が、コレだった。
「何ですか?」
『ケジャンです』
アガシ(娘さん)が答えてくれる。
「辛いでしょうネ」
『いえいえ、甘いですヨ』
「どうやって食べるんですか?」
『ちゅうちゅう吸ってネ』
口に入れてみた。
ちゅうちゅう・・
ヒエェ~~~~
辛~~~~い!
脳天が突き抜けた。
汗がどっと噴き出る。
舌が十倍くらいに膨れた感触がある。
その後、何を食べたか分からなくなった。
しかし・・・
次の日、朝起きてみると、
なぜかあのケジャンを食べたくなっている私がいた。
頬が恋しくなっていると言っていい。
辛さを克服したたった一夜。
関わったのは、
ケジャンである。
ここでふと思い出す。
子供のころ、鼻がつまっている友達が、
私(けんちゃん)のことを、こう呼んだ。
「
けじゃん」