ドラマの現場では、撮影に入るかなり前に、ある準備がある。
《衣装合わせ》
某所に、役者がひとりひとり呼ばれ、
ドラマの中で着る衣装を選ぶ作業のことである。
一着の事もあれば、着せ替え人形のように、数着の場合もある。
ピッタリの衣装がない場合は、自前なんてこともある。
この
衣装合わせと呼ぶ、いわば儀式は、
文字通りの衣装を合わせる事だけが目的ではない。
監督とスタッフとの顔合わせ的な要素が強い。
初めての監督だとすると、
監督側からすれば、役者の資質を詠んでいるのである。
《人は、一度飯を食えば分かる》
などと言われたものだが、
ドラマ界では、
《役者は着替えさせたら分かる》
てな事になるのかもしれない。
服を脱いだり、着たり、おしゃべりをする中で、
性格、生き方がにじみ出る。
衣食住というくらいだから、
食って分かるその前に、着たら分かるのかもしれない。
「娘さんと結婚させてください」
彼女の実家に初めて訪ねてゆくと、
お父さんが、しかめっ面で座っている。
父親からすれば、男は、一緒にゴルフをやり、麻雀をやって、
食事を共にすれば、人となりはすべて分かると考えている。
しかし、ゴルフと麻雀と食事なんて、
会ったその日にできるワケがない。
ここはひとつ、風呂だ。
つまり着替えである。
裸になって、風呂に入り、しばし語らう。
実に日本的でよろしいではないか。
「君、銭湯に行こう!」
アナタは、試されているのである。
「君、冷水は入る方かい?」
「リンス派かい、それともコンディショナー派かい?」