愛媛県で素敵なお雛様を見つけた。
外泊(そとどまり)の石垣の村に飾られていた。
石に絵を描き、色付けしている。
この村は、半島の傾斜地にある。
江戸時代から、長い年月をかけて、石垣を築いてきた。
一個一個、岩と石を運び、石垣を積み上げてきた。
やっと積み上げた石垣の上の小さな土地に、
家屋を建ててきたのである。
とてつもない苦労の賜物。
そこで、石の一つ一つに顔を書いて、お雛様を作ってくれた。
たぶん、子供たちが作ったものらしい。
お内裏様も、官女も、たくさんならんでいる。
よくよく見ると、周りに落ちている石にも、絵が描かれてある。
まだまだ、この段々に乗り切れない人形絵がある。
大作だ。
子供たちが作ったと言ったが、それにしては、絵がうまい。
ひょっとすると、絵心のある作家さんかもしれない。
石に対しては、並々ならぬ関心を抱いている村である。
石ひとつ、粗末にしては申し訳ない生活が長かった。
先祖の運び上げた苦労という財産の上で暮らしている。
たまたま通りかかった私という観光客に、
婆ちゃまが階段で、当たり前のようにご挨拶を返してくれる。
「ええ天気じゃな~ぇ」
昔のお雛様の、しわくちゃな笑顔が素敵だった。