人数のいる会議や、話し合いの場で、話が紛糾している。
そんな時、いままで黙っていた人が、隙間に声をかけてくる。
「ひとつだけ言わせてください」
それまで口々に意見を述べていた人たちは、急に黙り込む。
なんだろう?
とりあえず、聴く体制をとる。
「ひとつだけ・・」
と言われているのだから、「それだけは聴いてやろう」
居住まいを正す。
そして、彼・・
《
ひとつ言わせてくださいオジサン》が喋り出す。
実は、彼はこの言葉が口癖なのだ。
会議がまとまらない時の指摘役、と自分を捉えているようだ。
このオジサンの特徴は、
ひとつと言っておきながら、
「もう一つは・・」などと、追加してしまう。
「もう一点は・・」などと、言い方を変えて追加する。
「さらに言わせてもらえば・・」とも変化し、饒舌になる。
皆が黙って聴いているのをいいことに、
自論を、とうとうと手振り足ぶりで語りだす。
さんざん喋った挙句、
さすがに皆が、ざわつき出したあたりで、
「最後に、もうひとつだけ言わせてください」
新たな手法をくりだす。
「最後」となれば、聴くしかない。
再び、手振り足ぶり、腰まで振って語りつくし、
顔面が紅潮してきたあたりで、
とうとう皆が椅子から尻をあげだす。
すると・・・
「これだけは聞いてください」
ついに伝家の宝刀を抜く。
「これだけは・・」
と来たら、あげた尻を下すしかない。
面白いことに、この会議は、しょっちゅう行われるのに、
毎回、このオジサンの術中にはまるのである。
おそるべし《
ひとつだけ言わせてくださいオジサン》
ソラマメの苗を八戸で