削っている。
鉛筆を削っているのではない。
棒を削っている。
先を尖らせている。
富士山とか、霊山とかの山を登るときの、杖替わりの棒だ。
この棒は、これから行くわが探検隊の山登りの為に、
用意されている。
いや、山登りではない。
谷下りだ。
残雪がたっぷり残った急斜面の沢を、
登山靴と一本の棒だけで滑って下ろうというのだ。
その名は・・・
《グリセード》
雪面の角度が、斜度40度を超えると、
もはや、一般スキーヤーには太刀打ちできない。
よもや、45度、50度など、絶壁に等しい。
そんな雪面を見て、ニヤリとする我らがいる。
「よお~し行くぞぉ~!」
崖のような雪面の頂上から、奇声を発し飛び出す。
足は、登山靴。
手には、一本の棒。
あやういバランスを取りながら、滑り降りる。
ここで、やってはいけない行為がある。
怖がって、尻もちをついてはいけない。
もし、尻もちをついたらどうなる?
尻というなだらかな接地面積の大きな物体によって、
スピードがあがる。
どんどんあがる。
そうなったら、もう止まらない。
止まるべく持っていた棒が役にたたなくなる。
滑り降りる先には、クレパスがパックリ口を開けている。
目に見えぬ、落とし穴が待っている。
大きな岩が、待ち受けている。
「止まらなくなったらぁ~ど、どうするの?」
止めるしかない。
その為に、棒の両側を尖らせた。
雪に突きさせ!
さてと、参加予定の、滝田くん、杉山くん、ヨウコさん、
心してかかるように!
私の予想を述べておこう。
君たちは、30度の急斜面をなぜか走り下っているだろう。
「30度なんか緩斜面だぁ~」と、奇声をあげて・・・