「箱根登山鉄道の車両が引退する」
2月にそんな情報が伝わってきた。
出かけることにした。
60年前に作られたレトロな車両が、最後のお勤めをするらしい。
最終日に箱根駅のホームにいた。
「おそらく、とんでもない混雑になるだろナ」
最後となれば、鉄道ファンでなくとも、どっと押しかける。
ブルートレインの引退時もそうだった。
ところが・・・
ホームは、閑散とはしていないものの、
混雑はない。
軽い拍子抜け。
やがて、110番の水色車両がやってきた。
乗り込む。
周りを見回すと、なにやら外国人が多い。
ヨーロッパからの方がたくさん見受けられる。
「ホエアカム フロム?」
『ポーチュギー』
ポルトガルからおいでなさったそうだ。
最終の列車に乗りたかったと語っている。
ふ~む、わざわざこのために・・
乗客の半分くらいは、海外の方だ。
そもそもこの登山鉄道は、その昔、
横浜だのの都内在住の海外の方達が、
箱根の山の高原に避暑に向かうために造られた、
とも言われている。
懐かしさや、想い出は外国人の方が多いのかもしれない。
ガタコンカタコン
スイッチバックを繰り返しながら、
斜度80パーミルを登ってゆく。
80パーミルとは、1000m進む間に、
80m高度が上がるという角度である。
4人座りの席で、進行方向に対して、後ろ向きに座っている人は、
座席からズリ落ちそうになる。
そんな角度だ。
試しに、カップに水を注いで窓枠に置けば、
水面は斜めになっている。
車両が引退したからといって、登山鉄道がなくなるワケではない。
新車両として、冷暖房の効く快適な車両にかわられる。
ところで引退した車両は、どうなるのだろう?
日本人が拵えたモノは非常に性能も耐久性も良いらしく、
使おうと思えば、まだまだイケルそうだ。
特に、この路線は、新幹線と同じの広い軌道用であり、
それは、世界中の車両と共通しているのである。
ひょっとすると、今後、世界のどこかの国で、
110のナンバーが付いた、水色の列車が見られるかもしれない。