《脱脂粉乳》 だっしふんにゅう
「脱脂粉乳飲んだよネ、マズかったよネ」
このフレーズを、よく耳にする。
「給食で配られて、みんな残したよネ」
コレも聞く。
さらに・・・
「いやな匂いがポワ~ンとして、あれはアメリカの策略だよネ」
「脱脂粉乳のセイで、俺達、味覚が狂ったよぉ~」
「あれって、豚の餌だろ?」
50年ほど前、給食で、牛乳と称されて、
脱脂粉乳が配られた。
昼食どきになると、
大きなズンドウに温められた牛乳もどきが、教室に運ばれ、
担当の生徒によって、アルミ食器につがれていった。
主食はコッペパンだった。
つまりコッペパンのスープが、脱脂粉乳という訳だ。
こいつが、見事なまでに人気がなかった。
食事のあと、飲み残しがずいぶんあった。
全く手をつけない女子だらけであった。
さあ、そんな時だ・・・
最初にズンドウで配ったあと、
ズンドウの底に残った僅かな汁がある。
そこに目を付けた子供が数人いた。
「この残りなんだけんど、誰か飲む?」
すると・・・
さっと手を挙げる数人。
その中に、なぜか、けんじろう君がいた。
けんじろう君は、その味がとても好きなワケではない。
しかし、マズイとも思っていない。
単に、
食料が足らないのだ。
コッペパンとおかずと一杯の汁では、足りなかった。
お代わりが頂けるものなら、なんでもよかった。
「はい!」
手をあげると、他に3人、顔に
ハタケをつくった子供が並んだ。
お代わり食器に、並々とつがれた脱脂粉乳を、
持ち帰り、机の上で、ジュルジュルとすすった。
考えてみれば、高タンパク低カロリーである。
毎日毎日、コイツをお代わりしているのである。
田舎の子供が、アスリートになりかけている。
さらにけんじろう君は、ほほを赤らめていた。
(周りにいる奴らが残した粉乳を全部飲みたいなあ~)
《脱脂粉乳を悪く言わない党》
《脱脂粉乳のおかげです協会》
《脱脂粉乳に育てられました集会》
の立ち上げならば、少しは参加したいです・・はい。