青い海は美しい。
沖縄系のサンゴ礁の海は、ことに美しい。
目に染みる美しさだ。
この青い海を美しいという感覚は、
人間特有のものなのだろうか?
犬が、この海を見たら、どう感じるのだろう?
同様に、「美しい」と感じるのだろうか?
猫は?
馬は?
鳥は?
「ウチの犬は、サンゴ礁の前で呆然と眺めておりましたワ」
そう仰る方がいる。
確かに、犬がじっと海を見つめている光景をよく目にする。
あれは、何を見ているのだろう?
美しいという思いが浮かんでいるのだろうか?
それとも、主人が見ているから、マネをしているのだろうか?
それとも、なんとなくだろうか?
犬は、哲学的な顔をしている。
じっとしているだけで、何か考えているような顔をしている。
鼻の長い形相が、その哲学性を助長している。
しかし、その顔で、実は、
飯の事を考えているような気がしないでもない。
時折、目が泳いでいるのは、
何か食い物の匂いが流れてきているのだ。
その匂いにすぐ反応したのでは、御主人さまに叱られるので、
まっすぐ前方に顔を向けているだけなのかもしれない。
その方向に、たまたま青い海があった。
しかし、逆の意見もある。
犬は、海岸に来ると、たいがい海の方を向いて座る。
海にケツを向けて座ることは殆どない。
堤防などに座り込み、海を睥睨(へいげい)している感がある。
(ホオ、へいげいという漢字は難しいナ)
やはり海を積極的に見ているのではないだろうか?
そして、その美しさをそれなりに感じている。
恐らく犬は、自分の鼻先が見えているハズだ。
銃の銃眼のように鼻先を動かし、青い海を眺めている。
青い海の手前に、自分の鼻が浮かんでいる。
試しに人間もやってみるといい。
顔を上向きにそらして、目を伏せるようにして、
海を眺める。
低いが鼻が見える。
その鼻にペンを当てて長い鼻にみたて、
もう一度見る。
「おお~青い海を睥睨しているじゃないか!」
犬はこんな気持ちになっているのか!