「アイゼンとサングラスに靴カバーを持ってきて」
グリセードに参加する隊員に、メールを送っている。
すべての事をいっきにメールすれば、手っ取り早いのだが、
なぜか小出しに連絡する。
「泊まりは、オートキャンプ場」
次の日に
「自転車持ってきて」
二日ほどして、
「朝5時起床、6時出発」
次の日に
「キャンプ場は寒いので、防寒対策を・・炭火で暖をとる」
なぜこんなに小出しにしているのだろうか?
応えは簡単。
《あおっているのである》
楽しみなグリセード登山に早く行きたくなるように、
煽っている。
いっ時も忘れないように、次々に連絡がいく。
待ち遠しさに拍車をかけている。
前日だけ、嬉しくて眠れなくなるような煽り方ではない。
隊員をして、一週間前からワクワクがとまらず、
口から泡を噴き出しそうにさせている。
「ラム肉、ワインなどの買い物は、やっておく」
もはや目を白黒させている様子がうかがえる。
「湯たんぽはあるので、布団は持参して」
鼻息が荒くなっている。
その証拠に、仕事中にも拘わらず、
返事がすぐにくる。
こっちが送ったか送らないかのタイミングで、
送り返してくる。
『
わっかりましたアア~!!』
気合いの入り方が尋常でない。
昔、黒電話の時代に、チリチリチリの最初の、
チンッがなった途端に受話器をあげる人がいた。
彼女からの電話を待っているのである。
いや、チンッすら聞けないほどのタイミングの速さで、
取り上げるつわものもいた。
かかってきた瞬間、電話がつながった瞬間が、
彼には分かったらしい。
テレパシーかオカルトの世界である。
さっき異常に早い返事メールをくれたスギヤマ隊員の場合、
返信タイムがどんどん加速している。
そのうち、私が送る前に、返事が来るにちがいない。
泡を噴きながら・・・
2011年のチャレンジの時