♪~名もしら~ぬ、遠きしぃまより~♪
流れよったのは、ヤシの実だ。
椰子の実、と漢字で書いた方が、南国感が湧く。
遥か遠く、南国の島の海辺に実っていた椰子の実が、
ボトンと落ちて波にさらわれ、長い放浪のすえ、
この海岸にたどり着いた。
他に一本の木もない広いビーチだ。
本来なら、ここで、芽を出し、スクスクと育つはずだった。
ところが、ここは観光ビーチである。
ビーチのど真ん中に、椰子の木が生えてきたのでは、具合悪い。
はじっこであれば、それなりの景色として褒められる。
たまたま流れよった場所が、ピンポイントで失敗した。
長い航海が報われなかったのである。
植物の種子とは、報われないモノがほとんどである。
例えば、モミジの種。
秋になると、クルクル回りながら、風に吹かれて落ちてくる。
大量に落ちてくる種の中で、将来一本のモミジになるのは、
極めて稀有。
しかし、モミジの場合、その種が小さいので、
残念感が薄い。
ところが・・・
椰子の実は大きい。
報われなかった感を、ずんぐりとした無骨さで表現している。
それも、
美しい海辺でポツンといった詩的な趣として・・
♪~ふぅるさとの岸をはぁなれて、わぁれはそも波にいくつき~♪
さてと、もう一回さまよいの旅で出ますかいのぅ・・・
覚悟はよいかな・・君?