
夏は、スイカに支えられている。
スイカが、私の夏を持ちこたえさせてくれている。
子供の頃から大好きで、大人になっても、大大人になっても、
まだ同じ好きさを保っているモノは、なかなかない。
真夏の炎天下で大汗を流し、やっと辿り着いた我が家に、
スイカを見つけた時ほど、ホッとする事はない。
思わず、まあるい緑色の頭をなでてやる。
(頭とは、ツルがついている方だ)
ヨシヨシ、軽く叩いたりもする。
シャクッ!
包丁を入れる瞬間が、至極のひとときだ。
切れるというより、裂けてゆくスイカのきっぷのいいことヨ!
ザコンッ!
割れた途端、両側にゴロンと転がる赤い日の丸ふたつ。
なんとも言えぬ、あま~い香りがひろがる。
このまま、スプーンでほじってもいいのだが、
やはりスイカには、角が似合う。
食べ始めは、角に喰らいつきたい。
望むらくは、鋭利な角だ。
シャクシャク
工作作業がつづく。
やがて、二等辺三角形の見事な、料理が出来上がった。
スイカは切っただけで、料理と呼ばれる。
切られた断面が、これほど美しい果物もない。
自転車、バイオリン、楽譜が、
人間が作り出した三大完成物と言われているが、
そこに、スイカを並べていただきたいほどの完成物であると、
真夏の私は、信じている。