
「雨が岳、登ってきます」
タマちゃんが、我らを振り返りながら言った。
タマちゃんとは、ウインド仲間で、
常日頃、山の中に出没している元気者である。
『我らも行くヨ!』
私と、滝田隊員、ヨウコ隊員も賛同した。
雨が岳 (あめがだけ)1772m
歩き出しは、本栖湖湖畔。
標高差870m
その隣の竜ヶ岳には、しょっちゅう登っているので、
軽い気持ちで登り始めた。
よって、軽装だった。
一応リュックは背負っているものの、水は500CC。
食い物いっさいなし。
散歩気分の山行だ。
実際、昔の歌などを口ずさみながら、足を進めていた。
登山口から、急登が始まる。
途中、峠で一息つくものの、最後まで急登は続く。
しかも、暑い!
我ら4人は今登っている山の名前を軽んじていた。
《雨が岳》
なぜ、こんな名前が付けられたのだろうか?
長野県に、霧ヶ峰という山並みがあるが、
その地に行けば、すぐわかる。
いつも霧が出ている。
だから、霧ヶ峰。
滋賀県に、安曇野という地域がある。
行けば、すぐ分かる。
さっきまで晴れていたのに、すぐに曇ってくる。
曇りを安売りしている。
だから安曇野。
するってえと、雨が岳・・・
いつも雨が降っているのかい?
我らが本栖湖を出発した時、湖畔は晴れだった。
山中に足を踏み込み、こ一時間登った頃、小雨が降りだした。
で、暑い。
雨が岳が名前の本領を発揮しだす。
ジメジメ
この山の山頂は、富士山を眺めるには最適とされている。
しかし、雨。
我らは、雨に濡れているのか、汗でビチョビチョなのか、
全身ずぶぬれで、山頂にたどり着いた。
そして、驚くべきことに、その瞬間一気に雲が晴れ、
富士山が大きな姿を現したのである。
どうだ!
雨が岳にも勝った私は、究極の晴れ男である!
その晴れ男が、水を飲み尽くし、
タマちゃんが唯一持っていたラムネの飴玉を
めぐんで貰っているのであった。
