新蕎麦の季節がやってきた。
都会を離れ、秋の空の中を走っていると、
蕎麦畑が、広がる。
まだ緑の残る平野に、真っ白い花の畑。
蕎麦だと知らなくても、あの美しさは目に染み入る。
蕎麦だと知れば、ゴクリと喉ぼとけが上下する。
30~40年前に比べて、蕎麦畑は増えた気がする。
それも圧倒的に増えたと思われる。
以前は、蕎麦畑をわざわざ探したものだったが、
今は、田んぼの横に、蕎麦の花が咲いている。
アッチにも蕎麦畑、ソッチにも蕎麦の花。
しかし、コレでも国産蕎麦は足りないらしい。
全く足りないと言われている。
さほど、我々が蕎麦を食っている。
同じ広さの土地で、
米や麦ほどの量が育たないのも理由のひとつであろうが、
蕎麦食いが進んだのが、最大の原因であろう。
《新蕎麦入荷》
看板を見つけると、腹も減っていないのに、入る。
もりそばを注文する。
不思議な食事である。
蕎麦以外、何も食べない。
厳密にいえば、ワサビと少々のネギだけ。
栄養の偏りに、あれほど気を付けているのに、
蕎麦の時だけ、知らんぷりをする。
ノリすらいらないと拒否をしている。
最後に出されるスープだって、
蕎麦だけ汁である。
他のモノは一切入っていないと断言できる蕎麦湯。
他の食事に例えれば、
ワサビ付きご飯を食べながら、重湯を呑んでいる。
食べ終わると、
「ああ、旨かった」
爪楊枝を使っている。
一週間に何度も、この変わった食事をしている。
イタリア人が、何も入っていないスパゲッティを食べながら、
それを茹でたお湯を飲んでいたら、
彼らと友達になれただろうか?