
《JAXA》ジャクサの研究所に、たびたび足を運んでいる。
そこにあるプラネタリウムで、星を見るのが好きだ。
そんな時だった。
「月に洞窟が発見されました」
驚きの発表があった。
10年前に打ち上げた、月探査船<かぐや>が、
月面に溶岩洞窟を発見したと言うのである。
これは、数年前に「あるような?」と、
推測していた洞窟の検証が、
間違いなく明らかになったと宣言したのである。
すぐさま、洞窟探検家の吉田勝次氏に連絡する。
間髪おかず、返事がくる。
「うん、知ってる」
そこで、追い打ちをかけたい。
『月に行きませんか?』
当然、
「行きたい!」
っと、返事が来るだろう。
しかし・・・
この会話は、現実的だろうか?
なんせ、月。
ハワイとか、ナミビアとか、パタゴニアだとかではない。
確かに吉田氏は、地球上では、
地底探検のパフォーマンスはかなり秀でている。
溶岩洞窟の造詣も、深い。
その彼に、
「南極に行きませんか?」
『うん、行きたい!』
この会話であれば、しっくりくる。
現実味がある。
しかし・・
「月に行きませんか?」
『うん、行きたい!』
このふたつの目的地の開きは大きい。
あまりにも、大きい。
もし、映画であれば、おそらく、吉田氏は月に行ける。
行けば、何かを成し遂げるような気がする。
特にハリウッドは、<専門家>が大好きだ。
宇宙物理学者とか、惑星生化学者とか、異星間言語学博士とか、
突如、山の中からヘリで連れ去られる。
となると、足りないのは、洞窟探検家だ。
バタバタバタバタ
連れ去られるヘリの中で、吉田氏はつぶやく
「妻に電話したいんだけんど」
『ノー』
「八丁味噌持って行けるかな?」
『・・・』
「イシマルって人、行くの?」
『フー?』