「♪~ジングルベ~ル~♪」
クリスマスソングを、
ピアニストの小太郎さんが奏でている。
ただの弾き方ではない。
「え~とですネ、これから、ジングルベルを、
テイクファイブでやります」
なんですと?
テイクファイブとは、5拍子である。
私の知る限りでは、5拍子の曲は、2曲しか知らない。
『テイクファイブ』と『スパイ大作戦』。
長い年月の楽曲の世界で、これくらいしか成り立っていない。
そのスパイ大作戦のテーマですら、
昨今、8ビートに編曲されたほどだ。
さほど、5拍子は、人間世界では異端だ。
「5拍子ですので、ご協力を・・」
小太郎さんが、いきなりピアノを弾きだそうとする。
慌てて私が質問する。
『5拍子という事は、ジングルベルの4拍子との合わせ数で、
5×4の20の時に、ワンサイクルと数えるんですか?』
返ってきた言葉は以外だった。
「それは無理です。あくまで5拍子で進みます」
と言った途端、演奏は始まった!
♪~ジングルベ~ル、ジングルベ~ル~♪
見事なまでの、テイクファイブが奏でられた。
拍手喝采とはこのことだ。
ピアニストの頭の中はどうなっているのだろう?
頭と指はどういう繋がりをしているのだろう?
ついでに、足も・・
そう、彼は、裸足のピアニストである。
靴を履かずに、ペダルを踏んでいる。
どうして、彼は裸足なのだろう?
ついでに・・
彼はウインドサーファーでもある。
なぜなのか、北風が吹きすさぶ季節でも、
ビキニパンツ一枚で、海に出る。
私が、ドライスーツで走っている横に、
裸の彼がいる。
なぜだろう?
これまでは《裸足のピアニスト》と呼んでいたが、
これからは、こう呼ぼう。
《裸のピアニスト》