
シイラ
「今日どうする?」
夕方、問いかけられて時、私が答えるこの言葉が好きだ。
『魚、買いにいこう』
魚を買いにいくと喋っている。
いかにも漠然としたセリフである。
鯛とかヒラメとかと云う特定魚ではなく、魚。
それも刺身とか、一匹とか、焼き魚とかでもなく、
あくまで、カテゴリーとしての魚。
『魚を買いにいこう』というイメージは、
おおきなインパクトを持っている。
『魚を買いにいこう』と言った瞬間に、
虹のようなひらめきが広がっている。
『魚を買いにいこう』と言ったとたん、
アドレナリンが分泌され、【みなぎる】力が湧いてくる。
おおそうか、今夜は、魚が食えるのだな!
腕をグルグル回したくなる昂揚感に包まれる。
アンタ、昨日も喰ったでしょ!
指摘されそうだが、それとは違う。
自分で、魚を買いにいく行為は別モノなのだ。
昨日、海辺の飲み屋で、美味しい刺身を食おうが、
一昨日、北国の朝市で、舌鼓を打とうが、
その魚とは、全く違う類のものだ。
自分で、魚を買いにいく・・
誰にも邪魔されずに、ただただ突き進む、進行形!
買うか買わないかは、自分次第。
どの魚に目がいくかは、その時次第。
選択肢は無限大・・
すべては、<出会い>である。
『魚、買いにいこう』
悲しいことに、この言葉はいつも吐ける訳ではない。
連日の仕事が終わった夕方・・
自分にご褒美がいただけそうなひととき・・
カモメが、クワァ~と鳴きさけぶその横で、
なぜか、立ち上がる。
「そうだ、魚を買いにいこう!」
(どっかで、聞いたフレーズだな)

ウメイロという魚