「海にでましょう、魚を釣りましょう!」
タメトウさんと、サップで海にこぎだした。
SAP(スタンド アップ ボード)を釣り用に加工し、
トローリングも出来るようにしている。
椅子を設置、竿も立てられ、タモやパドル置き場も作った。
釣れた魚を入れる網と、大きな魚を吊るす紐。
ほぼ完璧である。
ザ~ザ~
沖に向かってこいでゆく。
とりあえず、1キロほど出たところで、釣り糸を垂れる。
疑似餌で底魚を誘うタメトウさん。
表層の魚を狙って、ルアーを投げる私。
真冬の太陽は、キンキンに鋭い光を放ち、
真っ黒いドライスーツを着た我らを温める。
北風の洋上にいて、汗をかいている。
「どうですかぁ~釣れましたぁ~?」
『だめじゃなぁ~』
いったん近寄り、竿ごと交換する。
今度は、タメトウさんが投げ釣り。
私が、底釣り。
グッグググ!
「おお~~釣れた釣れた!」
私の竿がしなっている。
あがってきたのは、ホウボウ。
どこにでも出没する魚だから、ホウボウ(方々)と呼ばれている。
釣れあがると、ボウボウと鳴くので、
ホウボウと名付けられたとも言われている。
その後、3時間ほど、トローリングを繰り返したものの、
タメトウさんの竿がしなる事はなかった。
ただただいい汗をしたたらせて、沖から帰ってくる翁の顔は、
満面の笑顔だった。
「いやあ~釣れんかったけんど、気持ちよかったねぇ~」
その夜、釣れたてホウボウの薄造りに、
涙を流しながらパクついている我らであった。