漁港が目の前の、魚屋にいた。
何10種類の魚や貝が並べられ、
その横には、活きた魚も売られている。
っと、その水面に何やら、白いモノが浮いている。
ハッポースチロールの小片だ。
数字が書かれてある。
1800
ほほう、この魚(鯛)は1800円だと、示している。
隣の魚(黒鯛)は2000円だと示している。
自分の値フダを空に引きながら、魚達が泳いでいる。
一見、哀しい光景のハズなのだが、どこか珍妙である。
死んだ魚が、魚屋の店頭に並べられる時には、
堂々と値札が貼られて列をなしている。
つやつやした魚体は魅惑的である。
ところが、生きている状態での値札つきは、なぜか哀しい。
ボクを買ってください。
ボクは、海の底で立派に生きてきました。
食べ物が少ない時でも、文句言いませんでした。
お兄ちゃんやおかあちゃんが、だんだん少なくなっていく時も、
じっと耐えました。
おなかが空けば、懸命に食べました。
暑い日は動かずにいて、
寒い時も動かずにいて、落ちてくるゴハンを待ってました。
つい一昨日、調子がいいもんだから、
泳ぎ回っていました。
片側になんか邪魔な網目が続いていて、
どんどん泳いでいったら、迷ってしまいました。
慌ててアチコチ動き回ったのですが、
ひょこっと、皆が集まっている場所にでました。
皆がグルグル回っているので、ボクもグルグル回りました。
すると、今朝、なにらや騒がしくなって、
突然、お日様の中に引っ張りだされたのです。
初めて、空気と云うものを吸いました。
気が付くと、背びれに何か付けられ、今こうして泳いでいます。
ごはんは、しばらく食べてません。
ボクを買ってください。
買って、ボクを元の棲みかに戻してください。
もう二度と、勝手に泳ぎ回ったりしません。
静かにしています。
仲間とケンカもしません。
ボクの名前は、1800です。