
「課長、サッサッ、奥へ」
飲み屋の奥座敷に、課長へ座布団がすすめられている。
長く続いたプロジェクトが終わり、課の打ち上げだ。
10数人が集い、奥から課員がつめてゆく。
「みなさん、生ビールでよろしいですか?」
課の一番の若手が声を張り上げる。
しばし歓談のあと・・
飲み屋のオネエサンが、ジョッキを運んでくる。
まずは4つ。
すると、
当然のように真っ先に、奥の課長の所に運ばれる。
やがてしばらくの待ち時間が過ぎ、次の4つが届く。
配られる。
ふと課長は自分の生ビールジョッキを見る。
届いた時は、
ふんだんのコマーシャルごときの泡にまみれていたが、
今は、薄い泡が乗っかっているだけだ。
すこし寂しくなっている。
さらに時間が経った頃、最後の数個が届いた。
そこで、さっきの若手が声を挙げる。
「では、課長から一言・・」
やおら立ち上がった課長が掴んでいるジョッキに泡はない。
対して、声を張った若手のジョッキはアワアワだ。
いかにも旨そうだ。
「では乾杯!」
ゴクゴクゴクッっといきたいのだが、
課長は苦虫を噛みしめている。
プファ~っと鼻の上に泡を付けた件の若者を見つめている。
「奴の泡は本来、私のジョッキにあるべきで、
プファ~は私の感嘆詞ではないのか?」
これは、ルールが間違っているのではないか!
生ビールを配るルールである。
奥から配る・・つまり、
上司から順に配るという配慮が、
実は、間違いなのではないか!
届いたビールジョッキは、手前から貰ってゆくべきである。
最後の最後に、一番奥でいばっている上司が、
泡だらけのジョッキを手にし、
サッと立ち上がり、
「諸君、よくやったゾ、乾杯!」
ゴクゴクゴク、プファー
鼻に下に泡をつける。
めでたしめでたし・・・
もう、ルールを変えよう!