「ツッシー、スキーに行かないかい?」
ウインドサーファーのツッシーをスキーに誘った。
現れたツッシーのいで立ちが異色である。
私には、スキーのコスチュームの長年の変遷はわからない。
が、その姿を見た滝田くんが・・
《わたしをスキーに連れてって》?
30年以上前に流行った衣装らしい。
つまり、30年間、押し入れの奥にしまっていたモノだ。
担いでいるスキー板が、これまた、随分長い。
これも30年前。
履いているスキー靴、これも30年前。
頭にかぶっている三角形の毛糸の帽子。
ガチャピンを彷彿させるゴーグル。
現在、ゲレンデの中に、こんな格好の人いやしない。
30年をワープして、何食わぬ顔のツッシーが滑っている。
30年間スキーをやっていなかったと云うのに、
慣らし滑りをしない。
いきなり、トップから滑降する。
私の横を、ものすごいスピードで抜いてゆく。
リフトに辿りつき、質問。
「何キロ出た?」
腕にスピード計測器をはめている。
『90、15キロです』
ふ~ん、時速そんなに出るんだ。
30年ぶりで・・・
30年前の道具で・・・
っと、ツッシーが質問してくる。
「腕にしている僕のリフトパスだけ、色が茶色なんですが?」
そういえば、滝田君も私も、ピンク色。
年齢別でもないし、男女別でもないし、
コスチューム別って事もありえないし・・・
とりあえず、パス入れから取り出してみた。
すると、中身は我らと同じピンク色じゃないか!
ってことは・・なんと!
リフト券を入れる透明な窓のフィルムが、
セピア色にあせていたのである!
30年、おそるべし!
ツッシーのパス 私のパス