《ヒメシャラ》という樹をご存知だろうか?
山の中に伸びる樹木で、関東以西に生息している。
サルスベリのような肌をしており、
地面から、まっすぐ上に伸びている。
黄金色をした色合いは幻想的で、山の中の樹としては異色だ。
伊豆の天城山(あまぎさん)の山中に、大量にみかけられる。
特に、皮子平(かわこだいら)と呼ばれる、旧噴火口の中には、
私の腕ほどの太さのヒメシャラが林立している。
木漏れ日が、その林をないでゆくと、
神秘的な雰囲気にみまわれ、おもわず天を仰いでしまう。
イムジチ弦楽四重奏の楽曲が流れてきそうだ。
天女が降りてきても、驚きやしない。
ときに、ヒメシャラは大きく太くなる。
ときに、表面の黄金色の皮がはがれると、
中から、薄紫色の皮が出てくる。
さらにそれをも剥がれると、白くなる。
まるで衣服を何枚も重ねた貴婦人のよう。
ブナの林の中に点在するヒメシャラは、
北国の山に例えれば、シラカバの役目を果たしている。
うっそうとした山に輝きを加えている。
音楽でいえば、パーカッションの働き。
ヒメと云うから、メスの樹かと思えば、
そういう訳ではないようだ。
つまりオスシャラはない・・だろう。
ヒメマスがメスばかりでないのと同じ図式であろうか。
ヒメシャラを見たければ、伊豆の踊子の天城トンネルから、
4時間ほど山道を登ってください。
後悔はさせません。
ヒメシャラの大木