《同性にからい》
芝居の話をしてみよう。
役者は、芝居の役者を観ている。
その時、
男である私は、男の役者にからい。
どういうことか?
男役者は、どうあらがっても、男を演じている。
男の生きざまを見せつけている。
男を見せる限りは、男をきちんと演じて貰わなくてはならない。
ところが・・
「ヘタクソだな」
時折、感ずる。
芝居がヘタクソなのではなく、男の芝居としてヘタクソなのだ。
ある時、気のおけない女優に訊いてみた。
「女優から見て、他の女優はどうみえる?」
返った言葉は、
『点数は、からいわネ』
我らと同じく、
同性にからいと云うのである。
ほんじゃ、男優には、どう点数をつけるか訊いた。
『まあ、あんまり気にならないわネ』
上手かろうが、ヘタかろうが、さして気にならないそうだ。
もういちどひっくり返して、男優にも訊いてみた。
『からい観方をするナ』
『つい、芝居を指摘したくなるネ』
なるほど、男優も女優も、同性にからい。
つまり、同性の些細な部分まで見えてくるのだと思われる。
なんたって、
些細な部分に異常なほどの関心をよせ、
表現しようとする人たちだ。
からいのは当たり前かもしれない。
つまり、俳優にしても、
やはり異性は、わかりにくい相手なのである。