《鹿肉のスペアリブ》
我が家の冷凍庫に君臨している骨付きの鹿肉を、
漬けてみた。
ニンニクだの、玉葱だの、リンゴだの、
思いつくモノで漬けてみた。
スペアリブと聞けば、豚を思い浮かべる。
豚肉には、脂が大量におんぶされている。
そのおんぶが美味しいのだとヨダレをぬぐえば、
はい、その通りである。
そこで、
鹿肉のスペアリブ。
野山を、敏捷に動きまわる鹿。
アスリートの鹿。
ほとんど脂らしきモノがない鹿の筋肉。
どうなのだろう、鹿のスペアリブ?
味付けしたからと言って、美味しいのだろうか?
焼いた。
オーブンが喜々として活躍した。
旨そうな匂いを吐き出しながら、オーブンの扉をあける。
見た目は、羊肉に似てなくもない。
ナイフが必要そうな色合いをしている。
グサリッ
ガブリッ
ふむふむ・・・
「いける!」
こいつは肉自体の旨味で勝負している。
決して脂の旨味ではない。
「野生をナメんなヨ!」
気概が感じられる。
骨付きの部位肉と格闘する。
ベリベリと剥がす、ブチリと噛み切る。
アングアングと噛み続ける。
会話がなくなる。
理由は簡単。
アゴが頑張りつづけている。
時折、アゴの筋肉を休めるべく、「ふぅ~」とため息をつく。
その息に、野生の香りが含まれている。
「
オラがオラで生きてきた存在理由が語られている」
ような気がする。
オラを食わせて貰ったが、オラにもひとこと言いたいのだヨ。
本来、オラたちに責任はないのだが、
オラたちの繁栄能力に、怯えている人間達なのだヨ。
もし人間たちが、
オラたちが旨いことに気づいたら、
オラ達、どうするヨ?
バギューンとか、ガチャリとか怖いモノが・・・