加速する読書
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 読書をする。
本を読むというカテゴリーを狭くして、
《小説を読む》という行為に特化してみよう。

文庫本片手に、椅子にふんぞり返っている。
一冊の文庫本の、7割がたまで読み進んできた。
そこで、ふと思う。
小説を読んでいると、加速がつく
読み始めの、10ページ読破するタイムと、
半分までやってきた速度は、違う。
よもや、後半に至っては、相当の速度の差が生じている。
おそらく、2倍、3倍の読み進み速度が発生している。
なぜ・・だろうか?

一つには、登場人物の確認がなくなる事が挙げられる。
一つには、場所の説明がなくなる事が挙げられる。
さらには、人間関係がはっきりし、
修飾語に反応しなくてよくなる。

 「きらめく舞台もどきの柱の陰から、
  村松は大海の怒涛の波に似せた、
  紅蓮の炎を繰り出した」

柱の横で村松さんがタバコに火をつけただけなのだ。
つまり読者は、後半では文脈をすっとばす素早さを身につける。
すると、懸命な作家は、
文章を区切る<、>の数を減らし、
<。>を増やす。
一文を短くし、リズムを大切にするようになる。

これは、映画でも同様の手法が用いられている。
導入部は激しく始まり、その後タラタラと説明部分があり、
後半では、息をつかせぬ急展開となってゆく。
映画は、映像があるので、分かりやすい。
ところが、小説となると、
すべてが読者の想像の世界になる。
そこで我々は、作家の微妙なる手練手管によって、
「その世界に、いつづけたいのか」
「離れたいのか」
の判断に迫られる。
この時間帯が、後半の4分の3あたりだと思っている。

そこは、読書の加速コーナーだ言っていい。
このコーナーまで読み進められば、本はさらに加速する。
まるで、風に吹かれてページをめくるほどの勢いを得る。
面白さのアクセルが踏まれる。
こうなると、もう本が手離せない。
競馬に例えれば、第四コーナーを回ったところである。
ここまできて、帰る客はいない。
結末を知らずして、本を手放すハズもない。
馬券を手放すハズもない。
しかし・・・
最後の直線にかかったところで、なぜか、
読み進めるのを、一時的にやめ、本を閉じる輩もいる。
私だ。

なぜ・・?
ゴールが惜しいのである。
ゴールをもうちょっと先に延ばしたいのである。
その瞬間を、朝の列車の大混雑のラッシュ時の、
ごちゃまみれの中で味わいたい
・・・
ヒネくれた私であったりする。
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by ishimaru_ken | 2018-06-06 06:06 | その他
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石丸謙二郎
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