東京の電車の窓が、まだ、開いた頃の話である。
当時、夏は冷房がないので、電車の窓は
下半分が開いていた。
その事が、あんなことを引き起こすとは・・
西武線に椎名町(しいなまち)と言う駅がある。
いつものように、電車が到着し、乗り込んだ。
空いている。
ホーム側のベンチシートに座った。
「閉まるドアにご注意ください。」
ドアが閉まる
寸前に、女の人が駆け込んできた。
そのまま、前の車両に小走りで去っていく。
随分あわてているなあ。
プシュー、ドアが閉まり、ゆっくり電車は動き出す。
やがて、ホームの端っこまで来た・・そのとき!
ガ==ン!!!
後頭部を思いっきり殴られた。
首が折れたかと思った。
ん?床に
男がころがっている。
その男、飛び起きると、前の車両の方に
駆け出していった。
いったい何があったのだろう?
目の中に星が舞い踊る頭で、今の状況を推察してみる。
男と女が別れる別れないで、喧嘩したらしい。
女の後を、駅まで男は
追ってきた。
しかし、女が乗り込んだ途端、ドアは閉まり、発車してしまった。
このままでは、もう一生会えないかもしれない。
走りゆく電車を見ると
、窓が半分だけ開いている。
ええい、ままよ!
スーパーマーン!
決死のダイブを敢行したのだ。
なんとまあ、命がけの恋だこと!
でもね、あんたはいい、あんたの恋だから命をかけても。
そこに、座っていた
おいらはどうなるの? ねえ