またもや、新人くんが山登りに挑戦だ。
太郎くん。
真夏のデビュー。
熱い!
であるなら、やや標高の高い山がいいだろう。
ってんで、富士五湖、
本栖湖にそそりたつ山がターゲットに選ばれた。
《竜ヶ岳》 1485m
これまで、私が何度も登っている山である。
しかし、最近とんと足を向けていなかった。
よし、太郎くんと登ろうではないか!
新人は、私にすすめられ、最新の登山靴を買ってきた。
ゴアテックスの最新鋭のレインウエアも買ってきた。
まったく山に登った事のない彼が、
ドキドキ感そのままに登山口にいる。
前日、あまりのプレッシャーに、夢の中に私が出てきたそうだ。
もの凄く怖いイシマルが登場し、鬼の形相で、
なにやら命令していたそうだ。
で、翌朝・・・
「さあ、登ろう!」
ついに、
太郎くん35歳、人生初の登山が始まった。
出発点は、本栖湖畔、標高900m。
したがって、標高差は600mほど。
都会の気温は、36℃。
ここは、28℃
頂上に行けば、もっと下がる予定。
まずは、樹林帯をえっちらおっちら登ってゆく。
30分もたてば、汗まみれになった。
高校時代、サッカーに親しんだという太郎くん。
さすがの足取りだが、なんせ、最近スポーツをしていない。
小一時間でアゴがあがり始めた。
疲れた時は、気を散らせるのが一番。
「アレは、アセビの木」
『汗びっしょり』
「アレが、ホウの木」
『ほう』
どうせ覚えやしないが、いちいち木の名前を教える。
「今、鳴いた鳥は、ウソ」
『うっそ』
「今のは、ホトトギス」
『・・・・・』
鳥の名前には、反応しなくなる。
しかして、2時間半の急登で、頂上にとびだした。
本来なら、ここで、銅鑼が鳴り響き、目の前に高々と、
富士山の秀麗がそそりたつところであったのだが・・・
あいにく、雲が湧き出てきて、主役は見えない。
「さあ、昼飯にしよう!」。
ここで、満を持したように、私のリュックから、
大ぶりの黄金色の物体が登場する。
《グレープフルーツ丸まま》
コイツをむいて、かぶりつくのである。
水分たっぷりの実を、内側の皮ごと口の中に放り込む。
ジュワ~~~
甘酸っぱい香りに包まれる。
至福のひととき~