
財布を持つようになって、久しい。
いまや当たり前のように財布をカバンに入れている。
家を出る時に、確認するモノとして、
財布、携帯、鍵である。
ところが・・・
私は、10代、20代、30代の前半まで、
財布というモノを持っていなかった。
では、お金はどうしていたのか?
特に、紙幣は・・?
答は簡単。
ズボンのポケットに、ねじ込んでいたのである。
小銭は前のポケットに、お札は後ろのポケットに。
世の中に、カードというモノが蔓延するまで、
財布とは無縁だった。
それはなぜだろうか?
「お金を落とした時のガッカリな気持ちがイヤだったから」
アナタにききたい。
これまでお金を落としたことがありますか?
いいかえれば、
財布を落としたことがありますか?
あると、答えたアナタは、
財布を落としたから、お金を落としたと気付いたのです。
さあ、ここで、その昔の私の場合と比べてみよう。
私は、財布を持っていない。
この場合、たとえ、ポケットの中から、
ボロリとお金を落としたとしても、本人は気づかない。
「なんか、お金少なくなったナ、昨夜そんなに使ったっけ?」
浮かんだ疑問はその程度である。
つまり、私は、お金を落としたかもしれないが、その事実を知らず、
心は痛んでいない。
お金をなくす痛みより、
なくした事をいつまでも悔やんでいる痛みの方を嫌ったのである。
今や、カードが私を縛っている。
もちろんカードが無いと不便極まりない。
その便利におんぶに抱っこされている分、
カードを入れた財布を大事に持ち歩かなければならない。
なくした事を悔やむだろう痛みが、常に私を脅迫している。
「ほうら、どこにやったんだ?」
「えっ、見つからないんだって?」
「落としたのかぁ~!」