
「おお~富士山があんなにくっきり!」
新幹線の中で声があがる。
デジカメを取り出し、電源を入れる。
とりあえずパシャリッ。
ありゃ・・手前に工場の壁が写ってしまった。
もう一枚、パシャリッ
あらま、電線の鉄柱が、横切った。
そこは富士市だ。
広大な裾野に町がつくられている。
年々すこしづつ建造物が増えている。
15年ほど前までは、ココゾというスポットがあった。
赤と白の煙突が富士の前にきたら、シャッターを押せばよかった。
今は、電柱との関係から、難しくなっている。
手前の様々なモノを避けなければならない。
新幹線架橋の外壁
工場
鉄塔
電線
特に、新幹線に電気を送る、送電鉄塔が悪さをする。
この場所は、270キロの走行区間だ。
一秒間に66mすすむ。
ココゾの反射神経で、シャッターを押すと、
かなり遅れる。
ゆえに、アナタは、画格の中の富士山を見ていてはいけない。
デジカメを顔の前に両手で固定し、
首をやや前進方向に向ける。
目で、そっちから飛んでくる邪魔物をやり過ごす。
ココゾと思うその直前に、フライングしてシャッターを押す。
「いくらなんでも、早すぎるヨ」
それくらいで丁度いい。
新幹線のスピードをなめてはいけない。
どうやら我々は、
新幹線慣れしてしまっている。
何十年もの間、何千台もの新幹線の走る姿を見てきた。
見過ぎたあまり、速さを感じなくなっている。
初めて新幹線が走るのを見たのは、50年も前。
220キロ走行の頃だった。
しばし、口が開いたままになったのを覚えている。
もし新幹線に翼を付けたら、空を飛べるのである、
理論的には。
では、私の失敗の数々を少しだけ・・・

あちゃ、手前に壁が

ありゃ 思いっきり壁が

あらら 樹木がぁ~

ひえ~ 工場がぁ~

うぅ、電柱さえなければ

もう、いやん

う~む、これはこれで、いいんでないかい