
関西から東京に向かっている新幹線が、
急にスピードを落とした。
というより、
静かになったまま止まり始めた、
という言い方が正しい。
たぶん、停電している。
その証拠に、明かりがすべて消えた。
やがて、停車する。
しばらくして、車内アナウンスが流れる。
「ただいま愛知県で地震が発生し、自動的に停車いたしました」
車内がざわつく。
「安全が確認できますまで、そのままでお待ちください」
立ち上がる人、携帯をいじる人。
「なお、トイレのご使用と喫煙所のご利用は控えください」
どうやら、トイレの流しは電気がないとマズイらしい。
喫煙所は、電気がないと排煙されないのだな。
すると、前方から女性の声が・・
『ねえねえ、名古屋で地震だってサ』
名古屋とは言っていない。
愛知県と言っただけだ。
『ねえ、なんで携帯の地震情報が鳴らなかったんでしょ?』
停まっている場所は、神奈川県である。
愛知県ではない。
『だって、震度4以上だと鳴るんでしょ』
だから、震度4以下だったんじゃないのかな?
離れてるから。
『トイレは仕方ないけど、空調だけ付ければいいのにネ』
停電とは電気が停まっているという意味です。
おばちゃまは面白い。
自由に発想している。
よく考えると、おばちゃまの意見が正しいような気もする。
停電でトイレが使えないって?
停電しただけで、室内が蒸し風呂になるって?
たしかに・・・
天下の新幹線なのに。
あっ、もう動いた。
さすが、新幹線!