
耳かきで、ほじっている。
ほじっているのは、もちろん耳の穴。
いつぶりだっけ?
たぶん、二週間ぶり。
まず、右手で耳かきを持ち、
右耳に近づける。
口は微妙に開けたまま。
目は、ホトケ様的な、正眼(せいがん)を保っている。
正眼とは、真正面よりやや下を見つめる行為。
いや、見つめるのではなく、
見ているようで見ていない境地・・・
《耳かき》では、その境地に達したい。
「ボリボリ、はい終わりました」では、
許されない。
《耳かきの哲学を述べてみよ》
大学の卒業論文の題目にあってもおかしくない。
《耳かきと私》
チェーホフの戯曲で舞台が演じられてもいいかもしれない。
《耳かく農夫》
ミレーの絵に、なぜなかったのか?
《耳第三楽章》
音が聞こえなくなったベートーベンに作曲してもらいたかった。