
ソレは、大阪の新しいビルディングだった。
17階に行かねばならない。
エレベーターの前に着いた。
なにやら大きな扉が5つ並んでいる。
数字表記は、1と15しか書いてない。
どうやら、いったん15階まで上がって、
乗り換えるシステムらしい。
ボタンを押すと、すぐに一つの扉が開いた。
開いたという表現が正しいかどうか・・
開口部がやたら大きい。
中に入ると、アホみたいに広い。
(大阪だから、アホは褒め言葉である)
学生の下宿より、明らかに広い。
40人くらい乗れそうだ。
乗せようと思えば、馬も入るか。
エレベーターには普通、色んな文字や模様が書いてあるもんだが、
ここには、無い。
唯一、
「走り込まないでください、すぐに次がきます」
とある。
さほど次々にやってくるエレベーターらしい。
押すボタンも、1と15しかない。
入口の逆面は、ガラスであり、外が見える。
あっという間に、15階にあがる。
これはもう、
《上下に走る列車》
じゃないのか・・となると、
乗り換えの15階は、駅と考えられないか。
ターミナル駅である。
都会では、列車が5分おきにくる。
山手線などは、3分でくる。
ついにビルも、待ち時間をなくそうと、列車並みになってきた。
今のところ、長椅子も吊り輪も装備されていないが、
そのうち、広告あたりは出てくるかもしれない。
テレビスポット広告は、15秒用で済む。
いや、ひょっとすると、このエレベーターは、
そのようなモノをすべて廃したのかもしれない。
車両の中には、何も書かれておらず、何も配置していない。
ただの移動列車。
味もそっけもないが、短時間の移動に、そっけを持ち込まない。
その代わり、「景色だけはいいですよ」・・・と。